2018年2月25日 (土)~3月5日(日) 遊美工房にて

人形に特に興味のなかった私に、人形制作のきっかけをくださったのは、大学の先輩でした。今回、私と遊美工房さんとをつないでくださったのは、版画家の徳長章さんでした。お二人とも岡山県のご出身です。
「ひいな遊美」展のお話を頂いてまず頭に浮かんだのは和気広虫でした。広虫は七三〇年、和気町藤野の生れです。道鏡の怒りを買い、狭虫と名前を換えさせられたと、少年の頃にまんが「日本の歴史」で読みましたが、仕返しの拙劣さが印象に残っていました。調べてみると、多くの孤児を養った尼僧とのこと、「庇護マントの聖母子像」とイメージが重なり、よい人形になりそうだと思い、制作したのは六年前です。
ともすれば閉じこもり、引きこもりがちな私が、昨年半ば頃から心境の変化があって、少し、人とのつながりを意識するようになりましたが、そうすると不思議なことに、長らく連絡をしていなかった人から突然連絡があったり、数十年ぶりに再会したり…人生の途上に、自分が気付かないうちに布石が打たれていて、こうして岡山県で展示をさせていただくことができたのか、と、そのつながりが、一種の神秘のように感じられました。隠された布石は、私の知らないどこかにつながっているのではないか、と少しの怖れと、静かな期待を、今も持っています。変化から生じた芽は、おそらくまだ枯れていない、と思うのです。

2018.2